2026/10/17
小池真理子さんの緋色の窓。一人称ですね。

本棚を整理していたら出てきたので、短編だったので、冷めた朝風呂に入るのにいいと思い、読みやすそうな文体だったので読んでみた。

主人公の女性は、幼いころ、歩いていたところバイクで近付いてきた人物に紐でバイクに縛られ、誘拐されそうになった。それに気づいた近くの人が阻止して未然に防げたのだが、これがこの小説にどんな意味をもたらしたのか考えてみたのだが、私にはよくわからなかった。

主人公は二人姉妹で、数歳年の離れた姉がいる。大人になり、姉は恋愛結婚をしたが、最初の子を階段から落ちたことで流産し、精神が不安定になり、家に引きこもるようになってしまった。主人公はそんな姉を支えるため、仕事で忙しい姉の夫に代わり、姉夫婦の家に泊まり込みで、姉の身の回りの手伝いする。姉も姉の夫も大変喜び、姉も精神が健康な状態になっていった。

姉夫婦の隣の家には、大企業の経営者の妾さんが住んでいたが、ある時亡くなってしまし、隣はしばらく空き家になっていた。
そんなある日のこと、仕事が遅くなりタクシーで帰ってきた姉の夫の為に、タクシーのドアの閉まる音に気付いた主人公は、先に休んでいる姉を気遣い、玄関のドアを開け、義兄を迎え入れようと表に出たが、そこには義兄もいなければ、タクシーの痕跡もない。しばらく付近の様子を眺めていると、隣の空き家から黒い人影が出てくるのを目にする。ぞっとしたが、そこからなぜか義兄が歩いて帰ってきた。声をかけても普段用様子とはちがうように思い、もしかして浮気でもしていたのか?とも思ったが、隣のお妾さんは既に亡くなっている。義兄は翌日にはいつもどおりの様子で寝室から現れ、主人公もただの気のせいだろうとそのことについては忘れていった。

時は経ち、姉夫婦に女の子が誕生した。主人公の母に似た感じで、バイタリティーのある子で、何事無く元気よく育っていった。幼いころから絵を描くのが上手で、賞なども何度かとっていた。
小学校3年生の頃、ある女性の絵を描き、これも賞をとり、小学校ではしばらくの間、学校の玄関に飾られるほど優秀な作品と評価された。しかし、主人公はこの女性の着ている服や、容姿は以前住んでいた(階段から落ちた家は引っ越していた)家の隣の、亡くなったお妾さんではないか、と思い、姉の娘に聞いたところ、想像で書いた、ということだった。

しかし、ホラー小説でよくあるような、怪奇現象や恐怖現象などは一切起きず、何事無く日々は流れ、その娘も結婚し家庭を持ち、45歳になった。
主人公は結局相手に恵まれず、独身のまま歳を重ね、主人公の母は99歳まで生き、眠るようにこの世を去り、母の夫の眠る海の見える墓地に埋葬された。

自分も74歳になり、墓参りをするたびに、あの頃のことを思い出し、この世とあの世の境目を垣間見たのではないか、と思い、いつか自分もあの時、あの場所へ戻ることができるのだろうかと考える。

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短い文章の中で、人生を幼少の頃から晩年までのもの悲しさを描いているように感じました。
故郷は遠くにあり思うもの? だったかな、そんな感じで私いつか自分の故郷に帰りたいと思うことがちょくちょくあるのだが、考えてみると、あの故郷のあの風景は、その時の気持ちが写されたもので、歳を重ねた今帰ってみても、あのなつかしさや哀愁は感じないのではないかと思ってきた。例えば、すごく美味しくて印象に残ったレストランを数年後に訪れても、懐かしさはあるものの、あの時の感動を感じることは二度とできないのである。かえって期待値たかいため、ちょっとしたことでがっかりしたり、イライラしたりすることになる。思い出は頭や心のアルバムに保存し、たまに思い出して、あぁ、良かったな、懐かしいな、と思うのが良いのではないかと思う。